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2005年06月06日

「セシルマクビー事件」:やはり商標法は大企業重視

最近、商標の話ばっかり書いてますが、商標に関する事件は内容的に生々しいのが多くてネタとして書きやすいんですよね。^_^;

さて、みなさん「セシル・マクビー」というと何を想い浮かべるるでしょうか?
普通は若い女性向けのファッション・ブランドでしょうね。
ところが、ちょっとでもジャズに詳しい人は黒人のベテランジャズベース奏者を思い浮かべるでしょう。
1950年代から活躍し、エルビンジョーンズなど大御所ともやってますし、山下洋輔氏のピアノトリオで来日ツアーもしてる人です。
超有名とまでは言いませんが、有名なジャズミュージシャンと言ってよいでしょう。
私も個人的に大好きなベーシストの一人です。

なので、初めてファッションブランドの「セシルマクビー」の看板を見た時は、「同姓同名のデザイナーでもいるのだろうか?そんなにありふれた名前でもないのに?」と思っていたのですが、このブランドを使ってる会社は純然たる日本の会社で「セシルマクビー」という名前を適当に選んで付けたようです(判決文ではこの辺の事情がぼかされているのですが、たぶん、代理店の人がたまたま見かけたレコードかポスターなどから何となく「おしゃれな響きの名前だなー」ということで選んだのではないかと想像します。)

で、ジャズ・ミュージシャンの方のセシル・マクビー氏は、このファッション会社の商標権の無効審判を請求しました。
請求理由は、ホリエモンの話のときにも出てきた商標法4条1項8号です。
今回は条文の読み方がポイントとなるのでちょっとややこしいですが略さずに書きますと「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く)」は商標登録しないということです。
今回の話に関係あるところだけ整理すると、
1.他人の氏名
2.他人の著名な略称
は商標登録しないということです。
たとえば、「キムタク」は明らかに2なので、 木村拓哉氏の承諾がなければ商標登録されません(当たり前)。

で、セシル・マクビーの件ですが、裁判所の見解は、
a.セシル・マクビーは本名ではない。同氏の本名はミドルネームを入れたセシル・リロイ・マクビーである。
b.ゆえに、「セシル・マクビー」は「セシル・リロイ・マクビー」氏の略称である。
c.「セシル・マクビー」という略称はジャズの世界では有名かもしれないが、それを超えて著名とは言えない。
なので、上記の1にも2にもあたらないということで、セシル・マクビー氏の訴えはすべて却下されました。

うーんどうなんでしょうね。
「ジョージ・ブッシュはアメリカ大統領の本名はではなくその略称である。」
というのは結構違和感がある判断ではと思うのですが(何か前例がある判断なのでしょうか?)。

まあ、何回も繰り返しているように、商標法は業界秩序維持が最優先なので、こういう個人の訴えを認めていたら切りがなくなるという判断が最初にあったのは否めないでしょうね。

ところで、ベーシストのセシル・マクビー氏なんですが、プレーはかなり黒っぽいですし、ルックスも濃い(写真参照)ですし、おしゃれなファッション・ブランドとはぜんぜんイメージが違うので、自分は(ジャズ好きな人はみんなそうだと思いますが)このブランドの宣伝見るたびに違和感を感じてしまうんですね。
mcbee2.jpg

投稿者 kurikiyo : 2005年06月06日 14:00

コメント

ブランドもジャズ奏者も知りませんでしたが、驚きです。
あくまで推測ですが、このブランド名がジャズ奏者と無関係でつけられたとは思えません。それに、「セシル・マクビーは本名ではない」というのは、かなり無理がある解釈だと思います。(そもそも業界秩序って?)

投稿者 anonymous : 2005年06月08日 02:47

ブランドはよーく知ってるけどこの人のことはここで初めて知りました。
っていうか、女名と思っていたし。(サマンサタバサとかもどうなのかな?)

>あくまで推測ですが、このブランド名がジャズ奏者と無関係でつけられたとは思えません。それに、「セシル・マクビーは本名ではない」というのは、かなり無理がある解釈だと思います

というのはもっともでしょうが、自分的には
>c.「セシル・マクビー」という略称はジャズの世界では有名かもしれないが、それを超えて著名とは言えない。
これが正直な感想。
これが「マイケルジャクソン」とかだったらGUILTYでしょうが。

ちなみに同姓同名といえば有名(ですよね?)歌手BOBBIBROWNと、高級化粧品メーカーBOBBIBROWNの重複が女性的には身近ですな。(いや、マイナーですけど)
この場合は本名だしよくある名前なので却下。ちなみに後者は女性です。
(関係ないことすいません)

投稿者 ランデヴー : 2005年06月08日 14:48

まあ、ぶっちゃけた話、商標法4条1項8号にちょっと無理があるということだと思います。
他人の芸名・略称については「著名な」というしばりが入ってるわけですが、他人の氏名については「著名な」のしばりは入ってません。
たとえば、「栗原はるみ」は商標登録されてます(もちろん、カリスマ料理評論家の承認を得てでしょう)、もし同姓同名の人が無効審判を起こしたらどうなってしまうのでしょうか?(注:審査基準には同姓同名の人の承諾を得ることも必要と書いてあります。)ミドルネームがないから本名ではないの「詭弁」も使えないですし。

投稿者 栗原 潔 : 2005年06月08日 15:15

「栗原はるみ」さんの場合は、他人ではなく本人(に関係する会社)の登録ですから問題ないと思います。
セシル・マクビー社の場合も、ほんとうにジャズ奏者と無関係に名づけられたのなら、問題ないとは思います。そう思えないだけで。

投稿者 anonymous : 2005年06月08日 18:58

いやいや、法文上はたとえ本人の出願であっても他に同姓同名の人がいた時はその他人の承諾が必要と読めますし、審査基準にも「自己の氏名等と他人の氏名等が一致するときは、その他人の承諾を要するものとする」と書いてあります。ゆえに、カリスマ料理家とは別の栗原はるみさんが存在したとして、その人が無効審判を訴えれば、理論的には無効となってしまうということです。

投稿者 栗原 潔 : 2005年06月08日 19:11

それは法文がおかしい :-) あ、

> 商標法4条1項8号にちょっと無理がある

ですね。

投稿者 anonymous : 2005年06月09日 02:11

工藤莞司「実例でみる商標審査基準の解説」(発明協会)では「実務上は、自己の氏名等と一致する全ての他人の承諾を必要とするのではなくて、他人にはある程度の著名性が考慮され」とありますので、必ずしも市井の「栗原はるみ」さんが無効審判を起こしても請求人である「栗原はるみ」さん自身に著名性が無いので無効にはならない、という解釈ができるようです。

投稿者 無名人 : 2005年06月09日 11:44

確かにそれが妥当な解釈ですし、特許庁の審査の運用としてはそうせざるを得ないでしょう。
しかし、審判さらには裁判の場ではどうなるのかとはなんとも言えないのではと思います。

投稿者 栗原 潔 : 2005年06月09日 20:08