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2005年04月26日

「がんばれ日本」商標事件:ドクター中松対日本オリンピック委員会(前編)

ちょっと古いネタですが、「がんばれ日本」という商標の商標権についてドクター中松と日本オリンピック委員会(JOA)が争っていた事件で、ドクター中松側の敗訴が確定したという件(参照記事)です。

商標権の概念について理解するのに良いネタだと思うので、この事件を2回に分けて分析していきましょう(既に知識のある人にとっては分析というほど大層なものではないでしょうが)。

商標権は要するにブランドを保護するための権利で、特許権と同じく知的財産権に属する権利です。
一番最初に登録された人に対して独占的権利(他人に勝手に使わせない権利、使うならライセンス料を取るよう契約を結べる権利)を付与するという意味では特許に似ているのですが、いくつかの大きな相違点があります。

一番大きな違いは商標権が指定商品についてブランドを商売で使う権利であるということです(正確には商品だけではなく役務(サービス)もあるのですが、単純化のため、以下サービスと商品をあわせて商品と書きます)。
指定商品というのは商標登録出願をする時に、このブランドはこういう商品で商売をする時に使うブランドですよというのを願書に書くわけですが、その商品群のことを言います。
商標権は、常に、ブランドと指定商品のペアで見る必要があるということです。

たとえば、「1・2・3ダァーッ」が商標登録されている(商標権者は(株)猪木事務所)のはトリビアの泉でもやったのでご存知の方も多いと思いますが、だからと言って、「1・2・3ダァーッ」と言うたびに猪木の許可が必要というわけではありません(当たり前)。
「1・2・3ダァーッ」というブランドでかつこの商標登録の指定商品(ものすごい数があるのですが、たとえば日本酒)の商品を売ったり、宣伝したりするためには猪木事務所の許可が必要となるということです。
また、たとえば「1・2・3デヤー」というブランドのビールを販売すると猪木事務所から差し止め請求を受ける可能性があります。
商標権は類似の商標を類似の指定商品に使うのにも及ぶからです(そうでないと、微妙に違ったブランドを使えば、いくらでも抜け道できてしまうので当たり前)。

ドクター中松(中松義郎)氏は、1994年に「フオルッアジヤパン\がんばれ日本」という商標を指定商品=印刷物で商標出願しており、1997年に商標登録されました。
一方、(財)日本オリンピック委員会は1998年に「がんばれ!ニッポン」という商標を多数の指定商品で1998年に商標登録出願しており、2001年に登録されました。

ここまでが前振りです(長い)。後半に続きます。

投稿者 kurikiyo : 10:50 | コメント (1)

2005年04月22日

【超雑談】堀江社長にしてほしいこと

どこかのblogか週刊誌で見た発言で、「livedoorの堀江社長を突き動かしているものは何か?」という質問に対する答に対して「彼はとにかく既成勢力を破壊したいのだ。かつての学生運動と同じだ。」と述べているものがありました(どうしても出典が思い出せません、最近こればっかりですが。)

最近のごたごたについても賛否両論なわけですが、少なくとも、既得権にあぐらをかいて、企業価値を高める努力が足りない企業は手痛いしっぺ返しを食うという教訓(というか資本主義経済の常識)を世の中に知らしめたという点では意義があったと思います。

とするならば、ぜひ、堀江社長に何とかしてもらいたい既成勢力はJASRACだと思っているわけです。
2001年に著作権等管理事業法という法律が施行され、音楽著作権の管理業務はJASRACの独占ではなくなったのですが、実際にはJASRACの独占と言ってよい状況になっています(Wikipediaの参考エントリー)。
JASRACそのものにも、演歌系の既成勢力が既得権取りすぎ、オペレーションの透明性を欠く等々いろいろ問題はあるようですが、とにかく競争原理が働かないのはまずいでしょう。
JASRACの実質独占が続く限り、日本の音楽ネット配信事業は先行き暗いと思います。

ということで、堀江社長にはJASRACと対等に対抗できるような著作権管理団体をぶち上げてほしいと思ったりするわけであります。

投稿者 kurikiyo : 00:13 | コメント (0)

2005年04月20日

AzulのNAP受注開始

エンジニアリング的な興味もあって、このblogでしつこくフォローしているAzul Systems社のNAP(Network Attached Processor)ですが、いよいよ受注開始のようです(参照記事)。

実はAzul社CEOのStepehen Dewitt氏にもインタビューしてきました。
Dewitt氏はCobalt社のCEOをやっていた人です。
当然ながらテクノロジーや市場の方向性もよくわかっていますし、大変にエネルギッシュな人でありました。

彼らのテクノロジーの優位性を説明する時のロジックですが、やはりこのblogのエントリー「プロセッサアーキテクチャの世界に風は吹いているのか?」のような話になりました。
「15年前のRISC革命の時と同じような変曲点(Inflection Point)が今また来ているのでしょうか?」と聞くと、「まさにその通り!!」との回答が。

テクノロジー的なことはあまり聞けなかったのですが、ハードウェア・レベルでGCをやるので、アプリケーション・プログラムの停止なしでリアルタイムGCができるようです。
また、コスト的にも「最も安価なIntelベースのサーバ(要するにDell)よりも安い」し、「設置スペースや空調などの環境コストまで加味するとさらに安い」そうであります。

米国ではIBM、日本ではCTC等、パートナーシップも強力であり、結構化けそうな気はします。

後は、実際に大手顧客にシステムを導入して価格性能比上のメリットの実績を作ることが課題でしょうね。
しかし、意外に日本のメディアのカバレッジは薄いですね。

投稿者 kurikiyo : 23:25 | コメント (0)

2005年04月19日

さらし系ウィルスのリスクをもっと真剣に考えた方が良いのでは

通常、ウィルスの被害というと今まではせいぜいファイルを消されたり、再起動不能になったり、DoSでネットを輻輳させるという程度ですが、ご存知のように最近はより悪質なウィルス(というよりも、トロイの木馬)が広まってますよね。

パソコンのスクリーンショット、デジカメ画像ファイル、メール等を勝手にアップローダに上げたり、2ちゃんねるに投稿したり、Winnyに放流したりしてしまうタイプのマルウェアです(参照記事1参照記事2
これらのさらし系マルウェアが怖いのはいったんネットに情報が流出してしまうともう回収は事実上不可能であるということ。
今のところは、個人の恥ずかしい画像がさらされたり程度で済んでいますが、ほうっておけば真に重要な機密情報が流出する事件が今後確実に起きるでしょう。

さらに、もう少し高度なマルウェアであれば、Winny等のP2Pソフトのプロトコルをリバースエンジニアリングして、P2Pソフトが導入されていなくてもファイルをネットに放流することだってできてしまうでしょう。
また、会社のネット等で2ちゃんねる等の掲示板アクセスをフィルタしてても、プロキシ経由で投稿することも技術的には可能です。
ファイルを暗号化しても、そのデータを画面上で読んでいる時にスクリーンショットを取られて、それが放流されれば暗号化の意味はありません。
要するにこの種のマルウェアに感染してしまうと、ネットにさえつながっていれば重要データが勝手に公開されてしまう危険性があるということです。
せいぜい、アウトバウンドのファイアウォールソフトで変なプログラムがネットにアクセスしようとしているのを検出するくらいでしょうか?(クレバーなマルウェア開発者であれば、これも回避してしまいそうな気がしますが)

この辺の話はネット・メディアではそれなりに扱われていると思うのですが、その割にはあまり一般紙やテレビでは報道されてない気がします(この種のマルウェアの元祖が「キ○タマ」という一般メディアでは言いにくい名称なのも理由でしょうか?)
これは単なる笑い話ではなくてかなりの脅威だと思います。

投稿者 kurikiyo : 00:24 | コメント (1)

2005年04月16日

【雑談】Sun社長のblogがやっと見やすくなりました

2月23日付けのエントリーで、Sunの社長兼COOのJonathan Schwartz氏のblogの字が小さくて読みにくい(しかも、サイズがポイントの絶対値で指定されているのでIEでは調節できない)と書きました。
実はその後すぐにSunのWebサイトの問い合わせ先にこの問題を報告していて、「対応を検討する」とのメールをもらっていたのですが、今見るとやっと直してくれたようです。
CSSを一箇所直すだけなのに2ヶ月かかるとは。
まあ、それでもちゃんと対応してくれたのでありがたいことではあります。

投稿者 kurikiyo : 08:01 | コメント (2)

2005年04月15日

RFID:米国の状況も実はまだまだ

前回のエントリーで、米国で着々とRFIDの現実的ソリューションが構築されつつあると書きました。
確かにそうではあるんですが、ケース・スタディの講演を聞いても話の中心となっているのは、タグをどこに貼ると読み取り率が上がるとか、箱の積み方を工夫して読み取り率を99%まで向上したとか(要するに100%にはならない)という話がほとんどでした。

また、「タグやリーダーについてはベンダーの主張(100%読み取り可)は全然あてにならないので、自社の環境で十分なテストをすることが必要」という発言もありました。
たとえば、無線LAN等でも、今ではあまり基本的な接続性を気にする必要はなかったですが、ちょっと前は機器の相性でうまくつながったりつながらなかったりという状況があったと思います。
要するに基本テクノロジーがまだ枯れ切ってないという状況で、現在の無線タグもそれに近い状況ということでしょう。

無線タグについては最先端であるはずのウォルマートの担当者の話ですら、そういう話が中心でした。
ただ1点興味深かったのは、例としてある商品の店内在庫量のグラフを見せてくれたのですが、そのグラフの横軸の単位が日ではなく時間である点でした。
こういうほぼリアルタイムに近い在庫情報を、やはりリアルタイムでサプライヤ側に送っているようです。
元々POS情報はリアルタイムで提供していたわけですが、無線タグによって入庫側の情報もリアルタイム化できたということなんでしょうか?(それとも、今までバーコードでやってたことを無線タグに置き換えただけ?)

本当は、無線タグの情報を既存のアプリケーションとどうつないでいくかとか、無線タグによりどういうビジネス・プロセスの変革があったとかそういう話を聞きたかったのですが、米国でもそのような話ができる状況にまだは未だ至ってないようです。

投稿者 kurikiyo : 11:52 | コメント (1)

2005年04月12日

RFID Journal Live!というイベントに来ています

シカゴで開催されているRFID Journal Live!というイベントに来ています。
会社の経費で来てますので、ここであまり詳しいレポートは書けませんが全体的な印象だけ。
一言で言うと「日本が大根に無線タグとか言って浮かれている間に、米国では現実的なソリューションが着々と構築されつつあるなあ。」という印象です。
RFID(無線タグもICカードも含む)のイベントなので、一応、ICカード系の話もあるのですが、下の講演会場の写真(倉庫を模している)からもわかるように、EPC仕様の無線タグでサプライチェーン(というよりもロジスティクス)を改善しようというテーマが中心になっています。
併設の展示会の方もほとんどロジスティクス関連のみと言ってよい状況です。

もうひとつ興味深かったのが貴重講演がDoD(米国国防総省)の担当者によるものであったということ。
ちょっとおもしろかったところを意訳して抜粋します。
「われわれがやっていることとウォルマートがやっていることは大きく変わらない。どちらも、食品、衣類、武器などを必要なときに必要な場所に届けなければならない」(注: 米国のスーパーマーケットではライフルやピストルを売っているところがあります。新聞のチラシにライフル大セール等書いてあることも)。
「しかし、われわれのロジスティクスの要件は3つの点でウォルマートより厳しい。まず、店舗(に相当する部隊)が移動していくということ、次に、クリスマス(需要のピーク)がランダムに訪れるということ、最後に、品切れをおこすと人が死ぬということである。」(ちょっと笑えないジョーク)
いずれにせよ、ロジスティクスとは元々軍隊用語(兵站)ですから、DoDの人が話すのも当然といえば当然です。

ところで、日本の某教授が「EPCの無線タグは商品の盗難を防ぐことを主眼としており、日本の状況とは合致していない」という趣旨の発言をされたことを記憶していますが、それは全くの言いがかりであることをここで言っておきたいと思います。
ケーススタディにおいても多くの流通業者がサプライチェーンの改善(要するに在庫の削減と品切れの防止)を最大の効果(ないし目標)に挙げており、シュリンクの削減は挙げていたとしても副次的な効果としてでありました。

では、米国では無線タグは完全にメインストリームになったかというとそういうことでもなくて、参加者の70%以上がベンダーやコンサルティング系の人であったようです。
少なくとも過半数がユーザー企業という状況にならなければメインストリームとは言えないでしょう。
来年あたりにはそうなるのでしょうか?

日本は電波法の関係でUHF帯タグが利用できなかったという特殊事情はあるにせよ、無線タグ技術のシリアスな使い方を真剣かつ迅速に検討しなければならないと国際競争力的にかなりまずい状況になると思います。

以下はどうでもよい写真の紹介です(買ったばかりのデジカメで操作がよくわからずピンボケ気味ですみません)。

倉庫を模したディスプレイのメイン会場。
RIMG0049.JPG

夜間の工事現場作業員のようなスタッフの制服、遠目でもわかりやすくて便利です。
バッジの色変えたくらいではよく見えないですからね。アメリカのトレードショーではよくある方式なんでしょうか?
RIMG0047.JPG

全員に配られていたガジェット。一瞬、iPod Shuffleかとぬか喜びしましたが、UHF帯タグリーダーの電波を検出するとLEDがつくというどーでもよいおもちゃでした。日本でやると携帯の電波に反応してつきっぱなしになりそうです。
RIMG0059.JPG

投稿者 kurikiyo : 13:53 | コメント (0)

2005年04月10日

【業務連絡】セミナーのお知らせ

いくつかセミナーの仕事が入ってますので、ここで告知します。

ハイペリオン株式会社主催「新世代の経営管理を実現するダッシュボードと次世代型BI」
 4月21日(木)13:30開始 青山ダイヤモンドホール 無料(事前登録必要)
BIテクノロジーを企業経営レベルで適用する考え方であるCPM(Corporate Performance Management)(ハイペリオンの用語で言うとBPM(Business Performance Management))について話す予定です。

■日経BP主催『SOAフォーラム2005』
 4月27日(水)9:30開始 東京コンファレンスセンター(品川)
 「ITとビジネスの融合を推進するSOA」というタイトルで話します。
 最後のセッションになってしまったのですが、他のセッションを見ると話がかぶりそうでちょっと不安です(最近はSOA関連の情報もずいぶん広まってしまいましたので)。
 BAMとかEDAの話を中心にして、SOAはちょっと控えめにした構成にしようかななどと思っています。

ご興味のあるかたは是非。

投稿者 kurikiyo : 23:45 | コメント (0)

ミッション・クリティカルという言葉

IT業界では、ミッション・クリティカル・システムという言葉が良く出てきます。
要するに企業の業務の根幹を成しており、停止すると企業の業績に直接的な被害をもたらすシステム、要するに止まったら非常に困るシステムと言うことです。
典型的には、銀行のオンライン・システムや飛行機の予約システムなどが相当します。
「基幹系システム」と意訳されることもあります。

ここで、どこからどこまでがミッション・クリティカル(基幹系)なのかという議論はあってしかるべきでしょう。
ちょっと前に、某インテル・サーバ・ベンダーのプレスリリースでLinuxサーバが某金融機関の基幹系で採用されたというプレスリリースが出たので、びっくりしてよく調査してみると、そのシステムとはリスク管理アプリケーションでした。
確かに、リスク管理システムは止まったら困るので基幹系といえなくもないですが、実際の処理の実態は計算処理中心で、ヘビーなデータベース処理が入るわけではないので、アプリケーションとしては結構シンプルです。

この例に限らず、ベンダーがミッション・クリティカルや基幹系と言ったときには、具体的にどのレベルのことを指しているのかを考えてみるべきでしょう。
たとえば、Linuxもカーネル2.6でミッション・クリティカル機能を強化したという触れ込みですが、もちろん、これはLinuxが今すぐに銀行のオンライン・システムに適用可能ということではありません。

ミッション・クリティカルを「止まったら困る」という風に定義してしまうと、たとえば、メール・サーバなどはかなりミッション・クリティカルですが、メール・サーバを基幹系と呼んでしまうのはちょっと違和感がないとは言えません。

たぶん、高要件トランザクション処理とか大容量データウェアハウス処理とかより具体的な言葉で、できれば定量的サービス・レベルで語ってくれると一番良い(たとえば「当サーバは毎秒1,000件のトランザクションを99.99%の可用性で処理した実績があります」という風に)のですが、ベンダーのマーケティング的にはそういうわけにもいかないでしょうね。

投稿者 kurikiyo : 11:20 | コメント (0)

2005年04月06日

富士通PrimeQuest発表

PrimeQuestとは、Itanium 2を使ったハイエンドサーバ(コード名:プレアデス)のこと。
Itanium 2の16ウェイ、32ウェイ(64ウェイはたぶん今年後半)、独自チップセット使用というのは既に報道されていたスクープのとおりでしたが、興味深いのはパッケージング技術。

ケーブルレス設計ということで、筐体内にケーブルがまったくといってよいほどありません(発表会場に実機があったので確認しました)。
これにより整備性が各段に向上したようです。
やはりこの辺の技術は国産メーカーの独壇場と言えますね。

また、チップセットレベルでメモリ、クロスバー、I/Oの二重化をサポートしており、ソフトウェアにとっては完全透過に障害時のフェールオーバーを実現できるようです。これは結構すごいかも。
したがって、Linuxも特に手を加えることなく、ハード・レベルの信頼性向上を享受できるわけであり、RHEL 4がそのままで稼動するようです(以前のエントリーに書いた、ベンダー独自の拡張機能をGPL規定にしたがって公開するのかしないのかという話は、このマシンにおいては関係なかったことになります。)

完全二重化やチェック機構の強化により、ハード的な信頼性はメインフレームと同等以上ということです。
ただ、心配なのはサポートOSがLinuxとWindowsということで、OSも含めたシステムレベルの信頼性でメインフレームを凌駕するのは難しいでしょう(メインフレームの枯れたOSはほとんどバグ抜けてますので)。
Windowsではどうしてもマイクロソフト頼みになってしまいますが、Linuxであれば、富士通がどんどんコミュニティに貢献することで信頼性向上できるわけであり、そのへんに期待するしかないでしょう(結果的に、コミュニティも利益を享受できますし)。

これで、NECも日立も富士通も自社独自の付加価値を加えたItaniumベースのハイエンドサーバを擁するという状況になりました。
米国系ではIBMがItaniumのサポート打ち切り、SunはAMDとの関係からItaniumをサポートする可能性はゼロに近い、デルはそもそもハイエンドはあまり興味なしということで、ItaniumをかついでいるのはHPじは当然として、後はユニシスくらいになってしまいました。
かつて思われていたようにItaniumがハイエンドの世界でもマジョリティになるかというとどうもそういう感じではなさそうですが、寡占状態になるよりも、PowerやSPARCと競い合っている今の状況の方が、市場構造としては健全と言えるでしょうね。

投稿者 kurikiyo : 22:47 | コメント (0)

守るべきは仕事ではなくてワーカー

前々回のエントリーで日本の労働市場の流動性の不足の話を書きました。

IT業界についてはまだ他業種よりは流動性高いと思うのですが、前々回のエントリーでも書いた携帯電話ベンチャーの話にもあるようにまだ米国のレベルには達してないのは明らかでしょう。

では、流動性を改善するためにはどうしたら良いかというと、すぐ思いつくのは給与制度の変革。
同じ会社にいればいるほど退職金が累積的に高くなっていく現行の制度は明らかに流動性を低めている要因になっているでしょう。
もちろん、退職金制度を廃止したり、退職金の先渡しを認める会社も増えてきていますが。

ただもっと重要なことは、会社に価値を提供していない人にどのようにして退場願うかということでしょう。
不用な人がやめてくれなければ有用な人を採用することもできないわけですから。
もちろん、会社の都合で勝手に従業員を解雇して良いというわけではありません。

ここで重要な考え方が"Protect the workers, not the job"ということだと思います(出典がどうしても思い出せません、ご存知の方教えてください)。
要するに会社や社会制度が保護すべき対象はワーカーであって、ジョブ(会社のポジション)ではないということです。
明らかに会社にとってあるポジションや部門が不要になったとしても、その仕事をしている人を解雇できないので、その仕事をなくせないというのは本末転倒ですし、会社そのものの体力を落としていくことになります(これは、workerを保護しているようであって、実はjobを保護していることになります)。
会社にとって不用な仕事はどんどんなくすなりアウトソースするが、ワーカーは可能な限り配置転換するなり、別の会社を斡旋するなり、教育プログラムを提供するなり、十分な退職一時金を提供するなりして保護するようなやり方をとるべきでしょう(当然、企業努力だけでなく、社会制度としての保護も必要でしょう)。

口で言うのは簡単ですが、workerを十分にprotectしないで、jobをprotectしている会社は結構多いのではないでしょうか?
ちょっと今回は専門外のことを書いてみました(突っ込みどころ満載?)。忌憚なきコメントお待ちしています。

投稿者 kurikiyo : 19:57 | コメント (0)

2005年04月04日

プロセッサアーキテクチャの世界に風は吹いているのか?

以前のエントリーで書いたAzul社のVEGAですが、やはり自社開発の独自アーキテクチャのプロセッサのようです。

どの市場でもそうですが、プロセッサ市場は時の経過と共に寡占化が進んでいく傾向が強いです。
エンタープライズ向けの世界で言えば、Intel、SPARC、Power、そしてIBMメインフレームくらいしか選択肢がなくなってきました(組み込み系はまた別の話です)。

プロセッサは、
1.上位のソフトウェアが蓄積していったんエコシステムができてしまうとそれを突き崩すのは困難
2.設計・開発・製造には莫大な投資が必要なので小規模企業が既存勢力を打ち崩すのは困難
という特徴があるので、強いものがますます強くなっていくと言う傾向があるわけです。

最近の例ですと、Transmetaがプロセッサ製造事業から実質上撤退してしまいました。
インテルとのバイナリ互換により上記の1の問題は回避できても、2の問題は如何ともしがたかったということでしょう。

しかし、テクノロジー環境の激変という一陣の風が吹き、市場構造が変わってしまうこともあります。
1990年ころに起きたRISCテクノロジーの台頭はその例でしょう。
当時のVLSIテクノロジーによるプロセッサの1チップ化は複雑な命令セットよりも、1サイクルで実行可能でかつコンパイラの最適化もしやすいシンプルな命令セットに圧倒的に有利に働きました。
その結果として、当時主流であったVAXやMotorola 68000系等々のエレガントな命令セットを持ったプロセッサ・アーキテクチャが死に追いやられました(Intelは命令セットが貧弱だったことが逆に幸いして生き延びることができました)。

今、15年前のRISC革命の時と同じような風は吹いているのでしょうか?
1.JVMや.NET CLPのように、バイナリ依存でないアプリケーション実行環境が整いつつある
2.ネットワーク・エッジ部分ではシングルスレッドのパフォーマンスよりも並列度向上によるスループットの方が重要になっている
3.製造プロセスの向上によりクロック数を上げて性能を出すという方向性が発熱の問題により厳しくなってきている
4.Itaniumのように、シングルスレッドの並列性を向上するアプローチは限界があることが見えてきた
などを考え見ると、結構強風が吹いているような気もします。

VEGAのように、シングルスレッドの性能はそこそこにして発熱を抑え、マルチコアによる並列性を追求する、JVM専用にしてバイナリ互換は捨てるというのは結構うまく風に乗ったアプローチではと思います。

ただ、Intelもバカではないので上記の風きはわかっているはずです。
そして、自社テクノロジーを活用して同じようなソリューションを出してくる可能性は十分にあるはずです。
TransmetaがIntelに勝てなかったことからもわかるように、既存勢力に勝つためには「より優れている」だけではダメで「飛躍的に優れている」だけの差異化が必要でしょう。

Azulはどのくらい差異化できるのか?めちゃくちゃ興味わいてきました。

投稿者 kurikiyo : 16:38 | コメント (0)