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2005年03月19日
書評『カーマーカー特許とソフトウェア―数学は特許になるか』
今まで読もう読もうと思っていて読めなかった本をやっと読むことができました。
理財工学(いわゆる金融工学)の第一人者であり、ソフトウェア特許反対論者である今野浩中大教授が1995年に書かれた中公新書の『カーマーカー特許とソフトウェア―数学は特許になるか』という本です。
なぜ、今まで読めなかったのかというと、弁理士試験勉強中はあまり立法論にかかわる本は読むべきではないと忠告を受けていたということ(当然ながら、弁理士試験は今の制度内でどうすべきかを問う試験であり、そもそも制度はかくあるべきという立法論を下手に勉強していると、論文や面接で自説を主張して心象を悪くするリスクが大きいらしいです)と、そもそもこの本がすでに絶版になっていたからです。
amazonで古本を買うこともできるのですが、定価の3倍以上の値段がついているので(といっても2000円くらいですけどね)買うのを躊躇していました。
ところが、会社の近くの区立図書館にこの本があることがわかり、早速借りてみたということです。
#最近の図書館は、ネットで蔵書も検索できますし、予約もできます。
#同じ区内であれば、別の図書館の蔵書を、近所の図書館に回してもらうようネットで指定することもできます。
#使わない手はないですよ。
前提として説明しておくと、カーマーカー特許というのは、AT&Tが出願した線形計画法の高速アルゴリズムの特許です。
純然たるアルゴリズムですから、これを特許化するのは数学を特許化するようなものであると多くの識者が反対したわけですが、米国のプロパテント(特許権者重視)政策の流れの中で特許化されてしまい、日本でもいったんは拒絶されたものの、結局(おそらくは政治的要因により)特許化されてしまったといういわくつきの特許です。
結論から言うと大変面白かったです。絶版になっているのが不思議なくらいです(タイトルにアルゴリズム特許ないしソフトウェア特許とでも入っていればもう少し注目を浴びていたと思うのですが)。
今野先生の本は、他に金融工学の入門書(『金融工学の挑戦』)を読んだことがありますが、こちらも大変ためになるわかりやすい本でした。
ただカーマーカー特許は、ソフトウェア特許というよりもアルゴリズム特許なので、特許化しない合理性についてもそれほど疑いがないように思えます。とは言え、今日のソフトウェア特許を考える上でも重要なヒントがあると思います。
ちょっと長くなったので、続きは別エントリーにします。

投稿者 kurikiyo : 2005年03月19日 00:24
コメント
そうですか、絶版になっていたのですか。
この本は私がこの世界に足を踏み入れた頃(7年ほど前)に何か適当な実践的な入門書(竹田先生の特許がわかる12章は読み終えていましたので)はないものかと思い、手にした本でした。
とにかくこの本を読み終えて思ったことは裁判と言う勝負の世界はとにかく難しい、白黒が付かないからこそ裁判に至るのですが、そこの結論だって白黒にはならず灰色的な結末になる、いわんや勝ったところで負けたほうはもちろん勝った方にも不満が残る(なんで、こんなのを特許にするんだ、早く決着をつけろ)事になります。
おまけに声が大きい方の考えがその後の主流の考えになる(裁判官は理系のことはわからない、ソフトウェア特許はけしからん、とか)という事をまざまざと見せつけた本だと思いました。
まぁ、今野先生のおっしゃりたいことは分かるのですが、ちょっとトンデモ的な所もあるのかなぁ、との思いも少しはあります。
投稿者 無名人 : 2005年03月19日 21:32
もちろん、内容的に古くなっている部分もありますが、今読んでも十分ためになる本なので、絶版というのは解せないですね。だいたい、書籍は文化的なものだからという建前で再販制にしてるのですから、売れないとすぐ絶版と言うのでは矛盾してます。
確かに今野先生の主張は納得できる部分も多いですが、ソフトウェア特許憎し(カーマーカー憎し)という感情が出てしまって論理の飛躍が見られるところが多いと思います。トンデモはちょっと言いすぎかなーとも思いますが(苦笑)。
投稿者 栗原 潔 : 2005年03月21日 13:57