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2005年03月02日

特許の新規性に関する誤解

発明が特許査定されることの重要な要件として新規性というものがあります。
既に世の中で知られていたり、実施されてる発明に特許権を付与してはならないのは当たり前ですね。

ここでよく勘違いされがちなのが発明者自身が出願前に実施したり公開してしまった場合にも新規性のルールは適用され特許は無効・拒絶になると言うことです。
なので、特許を出願したいと考えている方は、決して出願前にアイデアを公の場で実行したり人に話したりしてはいけません(弁理士には守秘義務があるので、弁理士さんと相談するのはOKです。また、自分で試験のために実施した場合等は新規性喪失について一定の救済措置があります。)

何でこんな話を急に言い出したかというと、、、
いつも行ってるカレー屋に「えびめし」(えび入りカレーチャーハンみたいな料理)というメニューがあるのですが、店内のビラに「製法特許取得済」と書いてあるのですね。
特許を取得してないものに対して特許の表示をすると虚偽表示の罪により最悪懲役刑を課されてしまう(特許法198条)ので、おせっかいながら本当に特許取得済かどうか調べてみました。
そうすると本当に特許登録されているようです。
たぶん、特許番号2894982号の「調味用ソースおよびこれを用いたピラフ」という特許発明です(請求項に「海老」という文字列がある特許はすごく少ないのですぐ調べられました)。

それはそれで良いのですが、店内の別のビラには「昭和30年創業変わらない味」と書いてあります。
もしこれも本当だとすると「えびめし」の製法特許はとっくの昔に新規性喪失してることになります。
最近レシピを変えてそのタイミングで特許出願したのかもしれないですが。
#いずれにせよ「えびめし」特許の無効審判を請求しても自分には何の得にもなりませんから、ほっておきますが。

さらにさらに思い出した話が、以前のエントリーにも書いたJALの搭乗券予約に関するビジネスモデル特許について調べた時に見た記事「日航が全日空を特許侵害で訴えた本当の理由は・・・」

JALの特許出願前にJASは似たような搭乗券予約システムを実施していたそうです。
さらに、(JALとJASの合併により)「JASの予約システムが廃止になったために、特許侵害訴訟で争ったとき、先使用の例がなくなったので、ANAの抗弁ができにくくなり安心して侵害訴訟をできる環境になったのではないか」と知財専門の助教授の推測が書かれており、この記事の著者であるジャーナリストの人も「これは卓越した推測である」と分析しています。

あれれ、もしJASが実施していた予約システムとJALが出願した予約システムが同等なものであれば、JALとJASが企業としてひとつになろうが、JASが予約システムを廃止しようが、一度公然実施してしまったのですから、JALの特許が無効になるのは同じのはずですよ。
専門家の人でもこんな勘違いをしてしまうんだなと思いました。
#もし、JASの実施を理由として無効審判が請求された時に、今やJASはJALと一体なので自社に不利な証拠を出さなくなる(のでJALが有利になる)ということであればまだわかりますが、ちょっと元記事の文章からはそうは読み取れないですね。

投稿者 kurikiyo : 2005年03月02日 09:51

コメント

あの文章を書いた人は決して専門家では無いと思います。単に、時流(ブーム)に乗った提灯持ちだという認識を私はしています。
知財バブルはいつはじけるんでしょうか?ビジネスモデル特許ブームは2,3年で終わりましたが・・・・。

投稿者 無名人 : 2005年03月02日 12:07

実は、かっこ付けで「専門家」と書こうかと思ってたのですが、ちょっとやらしいのでやめました。この記事の著者の人、知財の話を日経系のメディアで連載で書いてますし、単行本まで出してるんですけどねー。
知財バブルはいつかはじけるでしょうけど、本当に大事なのははじけた後でしょう。BM特許もブームは終わって、ほとんどの出願が拒絶されましたが、ごく一部有効なものが、今まさに権利化されつつあります。JALの特許もまさにその例だと思います。

投稿者 栗原 潔 : 2005年03月02日 12:35

第2段落で書いてることは特許法第30条に関することですか。こっそり試験する分には大丈夫なんじゃないかと思っていたんですが…私は「公然」の意味もきちんと知らない素人なので,思い違いを正していただけると幸いです。
飲み屋でとなりのおっちゃんにしゃべっちゃったらもうアウトとかいう話は聞いたことがありますが,噂で聞いただけなので本当のところはわからないし。

投稿者 わたやん : 2005年03月03日 22:51

もちろん、こっそり試験する分には大丈夫ですよ。
飲み屋でとなりのおっちゃんにしゃべるのは、建前上はアウトですね(立証できるかどうかは別として)。
要は、機密保持義務のない人に知られてしまっては原則駄目ということです。

投稿者 栗原 潔 : 2005年03月03日 23:02

えびめしをメニューにあげていたからといって、
「製造方法が公然実施とはかぎらない。」
カウンターで作ってたとしても、本当の製法が技術的に理解できるとはかぎらないし。

また、製造方法がちがっても同じ料理ができるかもしれない。

投稿者 : 2005年03月04日 03:33

ビラには「製法特許取得済」と書いてあるが、特許公報では、請求項1はソース、請求項2と3はそのソースを使ったピラフ、請求項4がピラフの製造方法の特許が請求の範囲として記載されている。
請求項1は物の特許なので、そのソースを使用したことで公然実施となり、新規性が否定され、ピラフにソースを使うことは当業者にとって当たり前の行為であることから、ソースの新規性が否定されれれば、そのソースを使ったピラフの製造方法の進歩性は否定されると解する。
過去と違う製造方法で出願したのという疑義については、本文中でも「最近レシピを変えてそのタイミングで特許出願したのかもしれないですが。」と触れているとおりである。
以上

投稿者 栗原 潔 : 2005年03月05日 00:12

言われてみると…そういうことですよね。ありがとうございます。

投稿者 わたやん : 2005年03月05日 11:35

ピラフの特許のことですが、
>請求項1は物の特許なので、そのソースを使用
>したことで公然実施となり
というのは、そのソースを使用したためにその内容(材料と配合割合)がバレテしまう場合に公然実施となるのであり、使用しただけでは分からない場合は、公然実施ではなく秘密性が保たれていると思いますが・・・
いかがでしょうか。

投稿者 masa : 2005年04月07日 17:52

うーむ、どうなんでしょうか?
だけど、一般人ならともかく、当業者(料理人)ならばピラフを食べた段階で「うむ、これはカレー粉とソースが入っている、色付けにカラメルを使ってるな」くらいのことはわかるし、自分で同じ料理を再現しようと思えばできてしまうのではないでしょうか?
また、吉藤80pには物を譲渡した時には公然実施したと解すべきとあります。
一般論で言うと、たとえば、薬を既に公に販売していても、薬を調べたただけでは製法がわからないのであれば、新規性は喪失してないのでしょうか?
こういう時に某掲示板がないと結構困りますね^_^;

投稿者 栗原 潔 : 2005年04月07日 23:29